住宅展示場の思い出

モデルルームというのは人々の理想の家をよく体現している。
最先端のシステムキッチン、生活感のないリビング、整頓された子供部屋。
これが一度実生活に晒されると、収納場所からあぶれた本、紙、出しっぱなしの洋服、おもちゃなどなど理想と大きく乖離した現実となるわけである。

ともあれ、人々はモデルルームに行くのが好きなのである。
最近では、住宅展示場に行くとただでご飯が食べられたり、商品券がもらえたり、全く家を買う気がないやつの方が来るだろうと疑わずにおれないような企画が催されている。
どのような意図でこうした企画をしているのか知れないが、集客だけにはとりあえず成功していよう。

私も大学生のころ、何故だか友人と一緒にかような住宅展示場に行った。
そこの不動産屋のスタッフの人は、私たちが家を買うような財力がないことをもとより承知しながら(ひやかし以下であることも承知しながら)、丁寧にその家の説明をしてくれた。
ちなみに価格は一億円。
景気がよかった時代とも思えないが、一億円とはなかなか大変な価格帯である。

そこの家をひとしきり観察して、感嘆の叫びもひとしきり挙げた後、そこの展示場でやっていたごくごく小さな子供向けのお祭り遊びをしたりした。
わたあめづくり体験とか、釣りゲームとかまあそんな類のよくあるやつだ。

外の広場みたいのところに、大きな風船ドームが作られていて、中にボールプールやトランポリンがあって遊べるというよくある奴、あれにも入って遊んだ。
もちろん周りは小さな子供のみ。
友人と一緒に恥ずかしげもなく遊んできた。

そして最後はもちろん、先だっての不動産屋さんのお姉さんが、私と友人に棒付きキャンディーをくれたのだ。
あれはいったいどういうつもりだったのだろうか。
今を持って判然としないが、とにかく住宅展示場はなかなかに楽しいところであった。

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